(2025/10/11出題)
2025年版「中小企業白書」(中小企業庁) 第2部 第1章 事例2-1-2 を加工して作成
【設問】事例を読み、以下の設問の回答をコメント欄にて送信してください。
2. A社長がMVVを策定するにあたって留意したことについて、100字以内で述べよ。
【事例】側島製罐株式会社
所在地愛知県大治町、従業員数 43名、資本金4,900万円、事業内容 金属製品製造業
MVV策定や人事制度改革などを通じ、組織活性化を実現した企業
側島製罐株式会社は、1906年創業の製缶会社である。菓子などの食品で使用される容器を主力とし、ブリキ缶やスチール缶を小ロット・短納期で製造する強みを持つ。石川貴也代表は2020年に金融機関を退職し、家業に入社したときから実質的に経営者となった。同社は2000年以降減収が続き、石川代表が入社した2020年12月期には過去最低の売上高で、直前3期は赤字に陥っており企業存続も危ぶまれる状態にあった。石川代表が入社してまず驚いたのは、社員間の雰囲気が悪く、組織として機能していなかったこと。さらに、変革に取り組もうにも、よりどころとなる経営理念がないことに強い問題意識を抱いたという。
組織改革の原点とすべく、全社員を巻き込んで、自身が働く意味、同社の存在意義・価値を定義する「ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)」策定に着手。社員の想いと策定過程にこそMVVの価値があると考え、石川代表自身の役割は取りまとめと言語化にとどめ、策定のオーナーシップは社員に任せる形とし、約1年を掛けて作り上げた。「このMVVは自分たちの心の中から生まれたものだという認識が社員には強くあって、みんなで大事にしようという機運はすごく高まった」と石川代表は語る。その後、石川代表は人事制度立案に着手するも、内発的なMVVに基づく仕事を他律的に評価することに矛盾を感じ、全員が経営を自分事と捉える自律型組織の構築に取り組んだ。組織づくりにおいては、社長を含む役職、評価などは全て撤廃したほか、各自がやるべきミッションを自ら考え、報酬を宣言・決定する自己申告報酬制度も導入している。ミッションの決定・達成にはサポートチームが手助けする仕組みも作り、社員のモチベーション向上だけでなく、社内の結束も強まっている。社長の顔色をうかがう組織から、自分の心に問い立てて、MVVを羅針盤として自ら考えて行動する自律型組織に生まれ変わった。
成果は早速業績に表れた。MVVの策定過程から効果は徐々に表れており、売上高は2020年12月期を底に20年ぶりに増収に転じ、その後は3年連続増収を達成。生まれ変わった組織では、缶の魅力を高めるような自社商品、低CO2鋼材を利用した超エコ缶など続々とアイデアが生まれている。既存の経営資源を活用しつつ、事業承継を機に変革に挑戦する「アトツギベンチャー」が体現されているといえよう。新たな仕組みになじめず同社を去る人材もいたが、能動的な人材が集まるようにもなった。2024年入社のcan推進課・伊東絵美氏は同社が3社目。「報酬の自己申告は初めてだが、いろいろと自分で提案してやってみたい性格なので、フラットな組織・人間関係は合っている」と話す。入社2年弱のcan製造課・中島拓海氏は「職場の課題を自分で見つけ、話し合って解決していくのは有意義。報酬制度もワクワク感がある」と語った。入社30年のベテランである物流管理課・安井幸男氏は「社員が自分で考えるようになった。自分も報酬に見合った行動や思考を出すように努力している」と変革の効果を実感する。「他人軸より自分軸で生きる方が豊かな人生を歩める。人生を預けてくれる社員には豊かな人生を送ってほしいと考えている。今までの慣習にとらわれず、中小企業だからこそできる新しい時代の組織づくり・『ベンチャー型事業承継』にアトツギとして挑戦していきたい」と石川代表は語る。
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