平成26年中小企業診断士2次本試験問題全文(Ⅰ~Ⅳ)

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事例Ⅰ

 

 A社は、資本金2,000万円、売上高約3億5千万円、従業員数40名(正規社員25名、非正規社員15名)の精密ガラス加工メーカーである。1970年代半ばの創業から今日に至るまで、A社社長が代表取締役として陣頭指揮をとっている。現在、A社の取り扱っている主力製品は、試薬検査などに使用する理化学分析用試験管、医療機関などで使用されているレーザー装置、光ファイバーなどに用いるガラス管などである。売上のおよそ半分をOEM生産の理化学分析用試験管事業が占め、あとの半分をレーザー装置事業とガラス管事業でそれぞれ同程度を売り上げている。
 現在、A社の組織は、生産、研究開発を中心にした機能別組織である。営業担当者は1名で、取引先との窓口業務にあたっている。研究開発部門には、研究室と開発室に計6名の社員が所属しており、工学博士号をもっ社員もいる。研究開発部門は、新製品開発や新技術開発のほか、製造装置の開発、レーザー装置の開発・販売を担当している。生産部門は、製造第1課、第2課、品質管理課の3つの課で構成されている。第1課は主に試験管製造を、第2課がガラス管など試験管以外の精密ガラス加工製品の製造を担当し、近年昇進した中途採用者がそれぞれの課の課長を務めている。そして、人事・経理などを総務部が担当している。
 A社が開発・製造している製品に関連する精密ガラス加工技術とは、われわれが通常イメージするようなグラスや置物、工芸品を製造する職人的な工芸技術ではなく、絶縁性、透過性、外圧の統制などガラスの持つ特性を最大限活用する高度な加工技術である。かつてテレビに使われていたブラウン管や真空管、放電管なども、精密ガラス加工技術をベースにした関連製品である。
 真空成形加工、特殊ランプ加工、ガス加工、延伸加工などの精密ガラス加工技術を活用したA社が取り扱う製品の開発・製造には、ガラス加工技術の知識や熟練技能だけでなく、物理学や化学に関する専門的な知識も不可欠である。A社社長が精密ガラス加工に必要な基礎技術や知識を習得し会社を立ち上げることができたのは、高校卒業後に10年ほど中堅ガラス加工メーカーに勤務し、そこで大手電機メーカーの研究所や大学の研究機関との共同開発のプロジェクトに深くかかわってきたからである。その時に培った人間関係や研究開発に関する技術や経験が、創業から今日に至るまで、A社の経営基盤を成している。
 精密ガラス加工技術を必要とする製品分野は、技術革新のスピードが速く、製品ライフサイクルが短い。そのため、サプライヤーは、新しい技術や新しい製品を取引先に提案することができなければ取引を継続させていくことは難しい。
 小さな工場を借り、サラリーマン時代の人間関係を通じて、大学などの研究機関から頼まれる単発的な仕事をひとりだけでこなす体制でスタートしたA社も、取引先の要望を超えるアイデアを提案することによって存続と成長を実現してきたのである。その成長スピードは決して速いとはいえないが、精密ガラス加工技術の関連技術を広げながら、今日の研究開発型企業へと発展を遂げてきた。
 創業から10年余り、依頼に応じて開発・製造した製品の多くは、技術革新や代替品の登場によって2~3年で注文がなくなり、なかなか主力製品に育たなかった。
 A社にとって成長に向けた最初のターニング・ポイントは、レーザー用放電管の開発であった。大学や大手企業の研究機関から依頼を受けて開発・製造に取り組んできたそれまでの製品とは異なって、A社社長のアイデアではじめて自社開発に着手したレーザー用放電管事業はひとつの柱となった。その後10年の時を経て、レーザー用放電管事業はレーザー装置そのものの製品化にもつながり、売上は大きく伸張することになる。
 もうひとつのターニング・ポイントは、レーザー用放電管開発と前後して、現在の主力製品となる理化学分析用試験管のOEM生産を化学用分析機器メーカーから依頼されたことであった。もっとも、この事業がA社の利益に大きく貢献するようになったのは、5年ほど前からである。というのも、製造依頼があった当初、分析用試験管の市場規模はまだ小さく、生産量も少なかったし、製造プロセスの多くが手作業であったことに加えて外注した製造設備を使っていたために、良品率が40%以下と著しく低かったためである。その後、試験管の需要増に伴って受注量も増えてA社の売上は少しずつ伸張したが、良品率が低く利益増にはなかなか結びつかなかった。試験管市場の成長を確信していたA社社長は、そうした事態を打破するために製造設備の内製化を決意し、段階的に製造設備の改良・開発に取り組み始めた。着手から5年以上の年月がかかったものの製造設備の内製化を進めたことによって、製造プロセスの自動化を実現するなど量産体制を完成させた結果、良品率は60%程度まで改善した。その後、理化学分折用試験管の品質も向上し、よりコンパクトになったにもかかわらず、良品率60%前後を維持してきた。ここ数年、さらに高精度の分析が可能な製品へと進化を遂げたこともあって高い製造技術が求められるようになっているが、良品率は90%を超えるまでに向上している。
 これらのターニング・ポイントを経る中で、A社社長は、以前にも増して、研究開発力の強化なくして事業の成長も存続も望めないことを痛感するようになった。それまでも、社内で解決できない技術的な問題や、新製品や新規技術に関連する問題が生じた場合には、顧問を務める関連分野の専門家である大学教授や研究機関の研究者からアドバイスを受けてきた。工学博士号をもった社員を5年ほど前から採用し社内に研究室を開設したのも、研究開発力をより強化し、新たな事業分野を開拓するためである。その成果こそいまだ未知数であるが、精密ガラス加工技術を応用した新製品の芽が確実に育ちつつある。さらに、近年、新たに大学院卒の博士号取得見込者を採用し、研究開発力強化に積極的に取り組んでいる。
 とはいえ、A社のような売上も利益も少ない規模の小さな中小企業が研究開発型企業としで生き残るためには、必要な研究開発費を捻出することがもうひとつの重要な経営課題である。レーザー用放電管の自主開発に取り組んだ時代のA社の売上高は1億円にも満たず、社員数も10名に過ぎなかった。そのような企業規模で新規事業のための多額の研究開発資金を捻出することは難しかった。A社が現在進めている新規事業の資金は、大部分が公的助成金によって賄われている。研究開発型中小企業にとって、官公庁の助成金の獲得は極めて重要な資金調達の手段なのである。

第1問(配点20点) 
 A社は、小規模ながら大学や企業の研究機関と共同開発した独創的な技術を武器に事業を展開しようとする研究開発型中小企業である。わが国でも、近年、そうしたタイプの企業が増えつつあるが、その背景には、どのような経営環境の変化があると考えられるか。120字以内で答えよ。

第2問(配点20点)
 A社は、創業期、大学や企業の研究機関の依頼に応じて製品を提供してきた。しかし、当時の製品の多くがA社の主力製品に育たなかったのは、精密加工技術を用いた取引先の製品自体のライフサイクルが短かったこと以外に、どのような理由が考えられるか。100字以内で答えよ。

第3問(配点20点)
 2度のターニング・ポイントを経て、A社は安定的成長を確保することができるようになった。新しい事業の柱ができた結果、A杜にとって組織管理上の新たな課題が生じた。それは、どのような課題であると考えられるか。100字以内で答えよ。

第4問(配点20点)
 A社の主力製品である試験管の良品率は、製造設備を内製化した後、60%まで改善したが、その後しばらく大幅な改善は見られず横ばいで推移した。ところが近年、良品率が60%から90%へと大幅に改善している。その要因として、どのようなことが考えられるか。100字以内で答えよ。

第5問(配点20点)
 A社は、若干名の博士号取得者や博士号取得見込者を採用している。採用した高度な専門知識をもっ人材を長期的に勤務させていくためには、どのような管理施策をとるべきか。中小企業診断土として100字以内で助言せよ。

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事例Ⅱ

 B社は、資本金1,500万円、従業員12名(パートを含む)の旅行業者である。創業以来、X市内の商店街に1店舗を有している。X市は中小製造業とベッドタウンが混在する街である。現在は高齢層比率が高まっているベッドタウンの高齢化対策が地域課題の1つとなっている。B社の創業は1990年、創業者は前社長である。前社長はもともと県内の大手旅行会社Y社の社員であった。史学科出身の前社長は歴史に関する豊富な知識と話術で、Y社在籍当時から、添乗員付きパック・ツアーのガイドとしてツアー参加者から高く評価されていた。やがてY社の方針に縛られずにツアーを企画したいと希望するようになり、Y社を退職しB社を創業した。
 創業当時の主力商品は前社長が得意とする、国内外の添乗員付きパック・ツアー(以下、「一般向けツア-」という。)であった。当時は知名度の低さから顧客獲得に苦戦する時期がしばらく続いたが、商工会議所主催のX市名所巡りでガイドをボランティアで担当したことをきっかけに新規顧客の獲得に成功した。やがて高い評価が口コミで広まりX市内を中心に顧客が増大した。顧客増大と並行して根気強く社員教育にも力を入れ、新入社員をツアーに同行させ、前社長の知識や話術を吸収させた結果、前社長が添乗するツアー以外でも高い評価を獲得し、組織として高いリピート率を得ることに成功した。創業5年後に調査会社を通じて実施したX市内消費者に対する市場調査では、添乗員付きパック・ツアーの市場シェアがそれまでシェア1位であったY社を上回るに至り、2000年頃までその地位を維持し続けた。
 創業直後の1990年代前半は一般向けツアーで高い評価を得たB社であったが、創業時点で既に一般向けツアーの市場は徐々に縮小しつつあった。その中にあって新商品を模索する必要に迫られていたが、1990年代後半に企業からの要望に応じた添乗員付きの海外研修ツアー(以下、「海外研修ツア-」という。)を主力商品に加えることに成功した。きっかけは、一般向けツアーに参加したX市内の中規模小売業チェーンの人事部長から依頼された米国の小売店視察ツアーであった。前社長は当初「小売ビジネスに役立つようなガイドはできない」と難色を示した。それに対する人事部長の反応は「視察とバス内の意見交換だけでは時間が持たない。海外で見聞を広めたいという社員の本音もある。研修の時間以外はバスでいつもの歴史の話をして欲しい」というものであった。このように始まった海外研修ツアーは社員から高い評価を得て、口コミを通じてX市内の中小企業を中心に依頼が増加した。2000年頃にはX市内における中小企業の海外研修ツアー市場でシェア1位を獲得するに至った。
 このように創業からの10年間は順調に成長を続けてきたB社であったが、2000年を過ぎた頃から状況は徐々に変化し始めた。まず大手旅行会社によるパック・ツアーの低価格化、インターネット利用による宿泊先やチケットの予約の簡易化が進み、一般向けツアーの業績が悪化し始めた。さらに2008年9月のリーマンショック後には、それまでグローバル化の流れの中で海外研修を拡大させていたX市内中小企業の研修予算が大幅にカットされ、海外研修ツアーの依頼も減少した。両商品共にX市内市場における市場シェアで価格競争力に優るY社を下回り、さらに市場規模の縮小が商品販売の悪化に拍車をかける結果となった。この結果を受け、自身の経営に限界を覚えた前社長は引退し、B社社員であった現社長に経営者の座を譲るに至った。
 現社長は経営の見直しを模索し始めた。その中で、現社長はかつて高いシェア、リピート率を誇った一般向けツアーがなぜ苦戦し始めたのかを調査した。先述の低価格化、簡易化で若年層離れが起きたことは感じ取っていたが、長期に渡りB社の顧客であった高齢層の離反について現社長は理由を理解しかねていた。かつての顧客に対する調査の結果、高齢層顧客は他社の低価格ツアーを利用したり、自分で宿泊先やチケットを予約しているわけではなく、体力的な問題でそもそも旅行に出かけづらくなっているという実態が明らかになった。一方で「行けるものなら好きだったB社さんのツアーにまた参加したい」という声も多数寄せられた。
 これらの調査結果に基づき現社長はB社商品の見直しに着手した。一般向けツアーに関しては将来的な廃止を念頭にツアー回数を削減し始めた。また市場規模が回復する兆しが見えない海外研修ツアーも現状の取引がある企業にとどめ、新規開拓は行わない方針を決定した。一方で、現社長が開発に取り組んだのは高齢者向け介護付きツアー(以下、「介護付きツアー」という。)である。このツアーは歩行、食事、入浴、トイレなどに関して支援・介護が必要な高齢者を対象にした国内旅行限定の添乗員付きパック・ツアーである。なお、対象となる高齢者だけでなく、家族も参加でき、要支援・要介護の高齢者の場合は、旅行代金の他に支援・介護レベルによって料金が加算され、家族の場合は一般向けツアーとほぼ同額で参加ができるという商品である。
 まず現社長と社員1名の2名で、介護に関する資格であるホームヘルパー2級の資格を取得し、商品開発に着手した。はじめは要介護の高齢者を含む1家族の添乗から開始し、次に数組の要介護高齢者と家族によるツアーを開催し、ノウハウを蓄積していった。並行して他の社員にも関連資格の取得を奨励し、また新しい商品に適した社員を採用し、安定的な商品供給体制の準備を進めた。そして、開発着手から1年後の2010年、正式な商品として販売を開始した。当該商品の販売開始時にダイレクトメールを発送したところ、高齢となったかつての顧客から喜びの声と共に多数の参加申込書が送付された。
 2014年現在、B社のトータルでの顧客数は2000年当時に比べて大幅に減少しているが、介護付きツアーは高価格商品であることから客単価は大幅に向上し、その結果、売上高や利益は2000年頃の水準に回復しつつある。また、X市内消費者を対象とした直近の市場調査では、需要の動きをうまくとらえ先行して介護付きツアーを開始した企業には及ばないものの、市場シェアが迫りつつある。このように業績は回復傾向にあるとはいえ、B社は介護付きツアーの新規顧客獲得や、導入したものの活用が進んでいない顧客データベースの活用などの課題を抱えている。現社長はこれらの課題に対するアドバイスを求めるため中小企業診断士に相談することとした。

第1問(配点25点)
 B社は創業以来、複数の商品を展開しながら今日まで存続し続けている。「2000年時点」と「2014年時点」のそれぞれにおけるB社の各商品が、下図のプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントのフレームのどの分類に該当するかを当てはまる分類名とともに記述せよ。「2000年時点」については(a)欄に40字以内で、「2014年時点」については(b)欄に60字以内で、それぞれ記入すること。
 なお「相対シェア」は、市場における自社を除く他社のうち最大手と自社のシェアの比をとったものとする。また、市場の範囲はX市内とする。

平成26年-2-2の図

第2問(配点25点)
 B社は現在、介護付きツアーにより、一度離反した顧客を再び顧客とすることに成功しつつある。現社長は次に、介護付きツアーの新規顧客獲得を目指している。そのためのコミュニケーション戦略として、SNSサイト上で介護付きツアーの画像や動画をプライバシー侵害のない範囲で旅行記として紹介している。しかし、要支援・要介護の高齢者本人にはあまり伝わっていないことが明らかになった。この状況を勘案し、新規顧客獲得のための新たなコミュニケーション戦略を100字以内で述べよ。

第3問(配点30点)
 以下の表は、顧客データベースから算出された介護付きツアーのデシル分析*の結果である。これは、顧客リストからランダムに抽出された100世帯の3年分の利用実積データを集計したものである。集計は1世帯単位で行われている。商品は3泊4日の国内ツアーのみであり、支援・介護レベルもほぼ同ーの顧客を対象としている。
 デシル分析結果をもとに、下記の設問に答えよ。
*デシル分析とは、全顧客を一定期聞における総利用金額の高い順に10等分し、その売上構成比を分析するものである。金額の高い順にデシル1、デシル2、デシル3・・・と続く。

デシル分析結果**

①デシル ②世帯数 ③客単価*** ④1世帯あたりの
平均総利用金額
⑤デシル
総利用金額
⑥デシル
総利用金額
シェア****
1 10 200,500 781,950 7,819,500 20.7%
2 10 200,300 660,990 6,609,900 17.5%
3 10 200,100 560,280 5,602,800 14.9%
4 10 199,900 359,820 3,598,200 9.5%
5 10 199,800 259,740 2,597,400 6.9%
6 10 199,800 239,760 2,397,600 6.4%
7 10 199,800 235,764 2,357,640 6.3%
8 10 199,800 233,766 2,337,660 6.2%
9 10 199,800 221,778 2,217,780 5.9%
10 10 199,800 217,782 2,177,820 5.8%

**単純化のため、付き添い家族は1名のみのデータを集計している。
***1世帯1回あたりの平均利用金額を示す。
****小数点第2位を四捨五入している。
 
(設問1)
 デシル分析結果から、B社の売上の構造はどのような状態にあるか、数値を用いて説明せよ。その上で現在の重要顧客層を特定し、併せて100字以内で述べよ。

(設問2)
 デシル分析結果から、上位顧客と下位顧客の総利用金額の差がどのような要因によって生じているか、数値を用いて説明せよ。その結果から導かれるB社が戦略的にターゲットとすべき顧客像と併せて120字以内で述べよ。

第4問(配点20点)
 現社長は、介護付きツアーの客単価を高くすることを目指している。そのためには、どのような新商品を開発すべきか、もしくは既存商品をどのように改良すべきか。助言内容を80字以内で述べよ。
 ただし、B社が単独で提供し、X市内の顧客に対して展開する商品に限定する。

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事例Ⅲ

[C社の概要]
C社は、世界市場で著名かつ高額な精密機器の構成部品となる超精密小型部品を生産、販売している。C社で生産される超精密小型部品の約90%は、主要取引先である大手精密機器メーカーX社の精密部品事業部を経由して国内外の精密機器メーカーに納品されて組み込まれている。
 C社は、自動旋盤による精密部品加工業として1993年に先代の経営者が創業した。そして経営を継承した現社長が超精密加工と超小型加工技術に特化してX社との取引に成功し、新たに熱処理設備およびメッキ設備を加えて精密部品のー貫生産体制をつくることでX社からの受注を拡大してきた。
 現在の従業員数は48名、近年の年商は7億円前後で推移している。組織は、製造部、総務部で構成されている。製造部は、顧客からの受注、生産計画、材料調達、精密部品生産、検査、出荷など受注・生産・出荷に関するすべての業務を担当し、管理スタッフ、設備オペレーター、製品検査担当で構成されている。新規受注などの営業業務については社長と専務の役員2名で対応している。
 主要取引先であるX社には、売上面ばかりでなく製品設計や工程設計などの生産技術や管理技術についても指導を受けるなど、経営のかなりの面で依存している。
 
【C社の生産概要】
 C社の生産工程は、切削工程、熱処理工程、メッキ工程、検査工程の4工程から構成される。自動旋盤による切削工程では、材料供給を行う設備オペレーターの監視下で24時間稼働による連続生産が行われ、その他の工程では、前日までに切削工程で加工された精密部品を昼間8時間稼働でロット処理している。
 生産計画は、X社から受注する精密部品約100品種の受注数量を基に、設備稼働状況や材料保有状況などC社社内の都合に合わせて1カ月ごとに前月末に作成される。X社からの確定受注数量は、X社顧客からの翌月1カ月の受注予想数量であり、C社へは毎月前月の中旬にFAXで送られてくる。C社では、X社からの確定受注数量を基に、精密部品の各品種1カ月確定受注分を切削工程の各自動旋盤に割り付け負荷調整し、生産計画がつくられている。その他の熱処理工程、メッキ工程、検査工程については、切削工程の加工終了後に各工程担当者の判断で加工順を決めている。X社への納品は月内であればよいことになっているため、生産完了後順次全品納入している。
 生産計画数は、最近増加傾向にある切削工程での加工不良率を加味して決めている。切削工程の加工精度は、自動旋盤の精度に左右される。現在の経営計画には自動旋盤の更新計画はないため、設備オペレーターが故障対応に主眼を置いて、それぞれの経験で行っている自動旋盤のメンテナンスについての対策が必要となっている。
 C社で生産される精密部品に使われている原材料は、特殊仕様品であり高額な材料が指定されている。納期は材料商社に発注後約2週間であるが、月末の在庫数、翌月の生産計画数と翌々月前半の生産予測数を勘案してほほ2ヵ月分の必要量が確保できるよう毎月月末に定期発注していて、在庫量の増加傾向がみられる。C社のコストに占める原材料費の割合は高く、上述した切削工程での加工不良率の増加による歩留りの低下傾向とともに問題視されている。
 
【C社の主要取引先X社の動向】
 主要取引先X社は、精密機器メーカーに精密部品を供給する精密部品加工専門企業として発展してきた。現在は精密部品事業と精密機器事業の2つの事業部を有し、創業時の得意分野であった精密部品の生産は外部に依存し、X社の工場では精密機器の組立、検査、出荷業務が中心となっている。
 X社の精密部品事業部では、国内外顧客約50社から受注される約200品種の精密部品を取り扱っている。X社の主要な顧客からは、大日程生産計画に基づいた3カ月および中日程生産計画に基づいた1カ月の発注情報の内示が毎月あり、確定発注は1週間ごとにある。X社では、納品リードタイム1週間に対応するために品種ごとに在庫を管理している。
 X社の精密部品事業部は、売上高の約半数を海外に依存しており、近年生産拠点を海外にシフトし、部品も現地調達化を進めている。そのため、精密部品事業部では国内発注量の減少が続いている。そこでX社では、精密部品事業部の国内部品調達および物流の合理化計画を進めている。これまで国内調達部品は品種別に分けてC社を含めた国内協力企業数社から調達していたが、この計画では超精密加工と超小型加工技術の評価が高く、必要な生産能力を有するC社1社に集約し、同時にX社の業務コストの削減を狙って、これまでX社が行ってきた精密部品の在庫管理および受注・発送業務もC社に業務移管することが検討されている。具体的には、X社が入手する顧客の3カ月、1カ月発注情報および1週間ごとの確定発注情報をC社とオンライン化し、C社から直接顧客に納品させるものである。また、この業務の移管に伴ってC社に支払う業務委託費についても検討されている。
 この計画が実施されると、受注情報はX社の顧客からの受注情報となり、C社の納品リードタイムは1.5カ月から1週間に短縮され、各品種の1回の受注ロットはX社の各顧客からの1週間分の確定受注数量となり大幅に縮小される。このため、生産システムの大幅な見直しが急務になる。

第1問(配点10点)
 C社の創業からの事業変遷を理解した上で、精密小型部品加工業界におけるC社の強みと弱みを60字以内で述べよ。

第2問(配点20点)
 C社の切削工程で問題視されている加工不良率の増加について、その改善を図るために必要な具体的対応策を100字以内で述べよ。

第3問(配点40点)
 C社では、主要取引先X社精密部品事業部の国内部品調達および物流の合理化計画に対応するための対策が検討されている。この課題について、以下の設問に答えよ。

(設問1)
 C社がX社の唯一の国内調達先となり、部品在庫管理および受注・発送業務の移管が行われると、C社にはどのようなメリットがあるのか、100字以内で述べよ。

(設問2)
 X社からの業務の移管に対応するためには、C社の生産計画や資材調達計画を今後どのように改革していくことが必要となるのか、160字以内で述べよ。

第4問(配点30点)
 C社社長は、主要取引先X社で進められている国内部品調達先の集約化の動きに対応して、X社との取引を高める一方で、X社以外の販路開拓を行う方針である。この方針を実現するためには、中小企業診断士としてどのような提案を行うか、C社の経営資源に注目して160字以内で述べよ。

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事例Ⅳ

 D社は創業が1950年代で、資本金2,000万円、正規従業員45名、売上高10億円の、県内に18店舗をチエーン展開する老舗喫茶店である。1960年代に現在の会長が考案した軽食メニュー、デザート類が人気を博し、現在の多店舗展開の礎を築いた。同時期にセントラルキッチン方式を導入し、自社工場を保有している。全国チェーンの企業が続々と県内に進出しているが、古くからの顧客を中心にD社の味を求めるファンは多く、県内での知名度は高い。
 店舗の多くは県内の主要な駅前、商店街の物件に出店するスタイルを続けてきた。これら古くからの店舗のいくつかは店舗面積も狭く、地方都市の中心市街地の衰退にも重なり、客足が落ちてきているのが悩みである。その一方で、近年はオフィス街のテナントや郊外のロードサイド店舗を実験的に開店し、成功を収めている。
 しかし、外食産業を取り巻く環境は、原油価格高騰によるエネルギーコストの上昇や、消費税増税等の影響、少子高齢化による市場規模の縮小やコンビニエンスストアとの競争激化による売上高減少のリスクにさらされている。以前、原価低減を目的にコーヒ豆の現地買い付けを試みたものの、為替差損を出したことがあり、ここ数年は専門の商社から原料を購入しているが、現地買い付けを再開しようと現社長は考えている。
 そのような状況下において、最近、インターネットのブログなどでD社の軽食メニューやデザートのいくつかが地元のB級グルメとして注目を集めるようになり、その後メディアで取り上げられる事例が増えてきた。これを好機ととらえ、現社長が中心となり、工場の一部のラインを利用してお土産として商品化することに成功した。現在、軽食2種、デザート1種の3商品が人気で、駅の土産物店や、道の訳、高速道路のパーキングエリア、サービスエリアのお土産物コーナーで取り扱われるようになり、収益の柱の1つとして見込んでいる。しかし、工場の生産能力にも限界があり、需要に合わせた商品群の整理も必要な時期に来ていると現社長は考えている。
 お土産としての商品化は収益の柱として期待されているだけではなく、県外客へのD社の認知度を高め、実際の店舗での飲食につなげたいと考えている。こうした新しい顧客創出のため、先に述べたロードサイド店舗の拡充や既存店の時代に合わせた改装など、新しい出店形態を模索している。
 D社および同業他社の平成25年度(平成25年4月1日~平成26年3月31日)の貸借対照表、損益計算書は、以下のとおりである。

貸借対照表
平成26年3月31日

(単位:千円)

資産の部 負債の部
 D  社 同業他社  D  社 同業他社
流 動 資 産 200,000 400,000 流 動 負 債 400,000 460,000
 現金及び預金 100,000 250,000 支払手形・買掛金 80,000 120,000
棚 卸 資 産 20,000 50,000 短期借入金 150,000 90,000
そ  の  他 80,000 100,000 未  払  金 70,000 100,000
固 定 資 産 1,000,000 1,050,000 そ  の  他 100,000 150,000
有形固定資産 900,000 900,000 固 定 負 債 600,000 480,000
建物 ・ 構築物 450,000 400,000 長期借入金 450,000 280,000
 機械及び装置 100,000 150,000 未   払   金 50,000 80,000
車両 ・ 工具 50,000 80,000 そ  の  他 100,000 120,000
土     地 250,000 200,000 負 債 合 計 1,000,000 940,000
そ  の  他 50,000 70,000 純資産の部
 無形固定資産 30,000 30,000 資       本       金 20,000 100,000
 その他固定資産 70,000 120,000 資   本   剰   余   金 80,000 160,000
利   益   剰   余   金 100,000 250,000
純   資   産   合   計 200,000 510,000
資   産   合   計 1,200,000 1,450,000 負 債 ・ 純 資 産 合 計 1,200,000 1,450,000

              損益計算書
      平成25年4月1日~平成26年3月31日
                         (単位:千円)

 

  

 

 D 社 同業他社
売    上    高 1,000,000 1,500,000
売  上  原  価 280,000 450,000
売 上  総 利 益 720,000 1,050,000
販売費・一般管理費 650,000 975,000
営  業  利  益 70,000 75,000
営 業 外 収 益 4,000 10,000
営 業 外 費 用 24,000 15,000
経  常  利  益 50,000 70,000
法    人    税 20,000 28,000
当  期  純 利 益 30,000 42,000

  

  

   

    

   

  

          

 

第1問(配点24点)
 D社の貸借対照表、損益計算書と同業他社の貸借対照表、損益計算書を比較して、D社が優れていると判断できる財務指標を1つ、財務上の課題となる財務指標を2つ、名称(a)とその数値(b)(単位を明記し、小数点第3位を四捨五入すること)を示し、そこから読み取れるD社の財政状態および経営成績(c)についてそれぞれ30字以内で述べよ。
 なお、優れている指標については①の欄に、課題となる指標については②、③の欄に、それぞれ記入すること。

第2問(配点30点)
 D社のある店舗の平成26年度における予想損益計算書は以下のとおりである。売上原価は売上高に比例している。設備備品の償却は定額法(取得原価1.000万円、残存価額ゼロ、耐用年数5年)で行われており、平成27年度期末で償却が終了し、改装のため取り替える予定である。しかし、この店舗の最寄駅では、平成27年4月1日の完成に向けて再開発が進んでおり、これに合わせて改装を早める提案がある。

    ある店舗の平成26年度予想損益計算書
                (単位:千円)

 

  

 

売    上     高 42,000
売  上   原  価 10,500
売  上  総  利  益 31,500
販売費 ・一般管理費 31,000
  人    件   費 19,500
  店 舗 賃 借 料 3,000
  そ の 他 経 費 6,500
  減 価 償 却 費 2,000
営   業   利   益 500

  

  

   

    

   

  

          

 

 改装する場合、再開発イメージに合わせた改装やインターネット環境などの充実のため、1,500万円の設備投資額が見込まれている。設備投資は期間5年の定額法(残存価額ゼロ)で償却される予定である。改装した場合は、販売費・一般管理費のうちその他経費が、平成26年度よりも10%増加すると見込まれている。
 平成26年度期末に改装した場合、駅前の再開発との相乗効果により今後5年間の売上は平成26年度よりも10%増加すると見込まれている。一方、改装を平成27年度期末に行う場合、相乗効果が得られないため、平成27年度の売上は平成26年度より5%増加し、平成28年度以降の4年間は平成26年度より10%の増加が見込まれている。
 なお、再開発に合わせた改装を行う場合、現在の設備備品は平成26年度期末の帳簿価額で翌年度期首に除却されるものとする。
 下記の設問に答えよ。

(設問1)
 平成26年度期末に改装した場合(a)と、平成27年度期末に改装した場合(b)について、それぞれの平成27年度の予想税引後キャッシュフローを求めよ。ただし、運転資本の増減はなく、法人税率は40%とする。

(設問2)
 平成27年度から平成31年度までの5年間における予想税引後キャッシュフローの正味現在価値を計算し、駅前の再開発完成に合わせて平成26年度期末に改装するか、予定どおり平成27年度期末の償却が終わるのを待ち平成27年度期末に改装するかを判断せよ。
 ただし、運転資本の増減はなく、法人税率は40%、資本コストは5%とする(計算には以下に示す現価係数を用いよ)。

     現 価 係 数 表

 

  

 

   

1年 0.95
2 0.91
3 0.86
4 0.82
5 0.78

  

  

   

    

   

  

          

 

第3問(配点30点)

 D社のセントラルキッチン部門における、人気商品X、Y、Zのロット単位当たり原価情報等は以下の資料のとおりである。生産はロット単位で行われている。生産したものはすべて販売可能であり、期首・期末の仕掛品などはないものとする。
 下記の設問に答えよ。

資料

販 売 単 価 5,300円 5,000円 5,500円
変  動  費 1,500円 1,400円 1,650円
直 接 作 業 時 間 0.4時間 0.6時間 0.5時間
個 別 固 定 費 18,000,000 17,000,000 17,000,000
共 通 固 定 費 15,000,000

(設問1)
 現状におけるX、Y、Zそれぞれの限界利益率を求めよ(単位を明記し、小数点第3位を四捨五入すること)。

 (設問2)
 平成27年度の需要予測がX、Y、Zの順で、10,000、8,000、4,000(それぞれロット数)と予想されている。平成27年度の工場における最大直接作業時間が年間9,600時間とした時、営業利益を最大化するX、Y、Zの生産量の構成比と、その求め方を述べよ。

(設問3)
 設問2の条件に加えて、商品XとZに販売促進費として、それぞれ50万円を追加すると、平成27年度の需要はXがさらに10%増加、Zが25%増加するとの予測に基づく提案がある。この提案を受け入れた場合の最適なX、Y、Zの生産量の構成比を求め(a)、この提案に対する意見を述べよ(b)。

第4問(配点16点)
 D社では、再度、コーヒー豆を直接買い付ける可能性を探ることにした。しかし、以前のような為替差損を計上する恐れがあるため、この為替リスクを軽減する手段の検討に入った。為替リスクを軽減する手段を2つ挙げ(a)、それぞれの手段を用いた際、円安になった場合と、円高になった場合の影響(メリット・デメリット)(b)について述べよ。

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