月別アーカイブ: 2017年11月

 

「戦友」のテーマ・ストーリー

こんにちは

今日は、事例Ⅰ「戦友」に込められた、テーマ・ストーリーについてです。
与件と設問(第5問)をもとにみていきます。
物語を読み進める感覚でどうぞ。

第5問
「第三の創業期」ともいうべき段階を目前にして、A社の存続にとって懸念すべき組織的課題を、中小企業診断士として、どのように分析するか。150 字以内で答えよ。

分析 ① 外部環境と戦略の乖離 ー 戦友たちの経験 ー

(起因となった出来事)

第一の創業期の終わり、長期景気低迷という逆風の環境下、X社は(結果的に無謀とも言える)事業拡大(戦略)により存続できなくなった

(懸念されること)

今も続く、長期景気低迷の局面下で事業拡大を図るA社にとって、戦友たちの経験や危機感が風化してしまい、同じ轍を踏むことが懸念される

(よって、組織的課題は)

事業継続の困難に遭遇した戦友たちの経験とそれに基づく危機感を共有、伝承していくこと。

分析 ② 戦友たちの引退 ー チャレンジ精神 ー

(起因となった出来事)

第二の創業期、A社社長が過半数を出資し、仲間7名もわずかな手持ち資金を出資して事業再建の道をスタートさせた

その後、A社社長と7名の仲間たちは、生産、販売のため、そして存続と成長をかけてともに一生懸命「戦った」

その戦い方は、出題者をして「戦友」と言わせるような「チャレンジ精神に満ちあふれた姿」であったに違いない

そして今では8億円を売り上げる企業に成長させた。

(懸念されること)

戦友たちのチャレンジ精神に支えられて成長してきたA社は、それを維持・向上しなければ、急拡大させている現状の売り上げ維持さえも懸念される。

ましてや、新たな製品を開発し、首都圏から全国市場へという大きなビジョンに立ち向かうならなおさらです。

(よって、組織的課題は)

戦友たちの引退により、チャレンジ精神を衰退・消滅させないよう醸成していくこと。

分析 ③ A社社長と専務の引退(=第三の創業期) ー 権限委譲 ー

ところで「第三の創業期」とは?

それは次期経営者たちの時代

では「その段階を目前にして」とは?

A社社長と専務がまだいるうちに

その段階での組織的課題は?

「企業経営者としての経験」を持つ人材を確保、育成すること

下記の「与件」がそのことを示唆しています。

「企業経営者としての経験がないといった不安(懸念)を抱えながらも・・・」 ※(懸念)は補足

つまり、経営をするには「企業経営者としての経験が必要です」という一般的な考え方を示すとともに、それなくしては存続に不安(懸念)が生じます、ということを出題者が示唆しているものと考えます

(よって、組織的課題は)
引退を前に、後継経営者に(権限委譲により)経験を積ませ、A社社長と同じように経営を行える人材を確保、育成すること。

(まとめ)
A社の存続にとって懸念すべき組織的課題

① 事業継続困難に陥った経験と危機感の共有と伝承
② チャレンジ精神の維持・向上
③ 権限委譲の推進による後継経営者づくりと事業部制組織への変革
④ それらを実現する人材の確保と育成

上記構成要素(一次知識やキーワード)を活用し「組織的課題は、」を主語に、与件の記述も使いながら、頭の中でも構いませんので150字の答案を作成されてみてはいかがでしょうか。

事例Ⅰ第5問解答欄枠

(解答例)
組織的課題は、創業の戦友が退職する中、①X社時代に事業継続困難に陥った経験と危機感の共有・伝承、②新商品の開発と首都圏出店、全国市場への進出を実現するチャレンジ精神の醸成、③A社社長の後継経営者づくりと今後の事業部制組織への変革を見据えた権限委譲の推進、④それらを実現するための人材の確保と育成である。 (150字)

ところで、上記まとめの中に「事業部制組織への変革」を盛り込みました。
これが、本事例を締めくくるテーマです。
根拠は以下の通りです。

A社は現状、機能別組織体制で、トップに意思決定や権限などが集中し、その分A社社長の後継経営者が育ちにくい組織構造上の特徴、風土、文化をもっています。(一次知識より)

けれども、首都圏から全国へ進出するとなれば「地域別にくくられた」事業部制組織への変革(事業や市場の規模・特性に合わせた組織形態への変革)も視野に入れなければならない。

第一の創業期には、そうした変革(=事業展開に応じた組織の再構築)は記されることなく拡大路線に突き進み、立ち行かなくなっています
  (=第三の創業期へ向けての懸念事項)

このように、権限委譲の推進は、後継経営者の育成とともに、事業部制組織への変革のために必要かつ有効な施策でもあるのです。

ー編集後記ー

今回のテーマ・ストーリーの解説にあたっては、十分時間を頂きましたが、この内容を80分で考え、試験会場に残すことが合格の必要条件ではございません。

そのことは、再現答案を評価していて理解できます。

ここで重視したことは、出題者が求めていた(と考えられる)テーマ・ストーリーを「 中小企業診断士として 」少しでも汲みとろうとする試みです。

普段の講座の中では、こうしたテーマ・ストーリーに、折々触れつつも「実際の80分で書ける答案の作成」を重視しております。

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2次試験 事例1を読み解くストーリー

こんにちは

議論の尽きない今年の事例1ですが、
この事例は、第四問を解きほぐすと、ストーリーがスルスルっと氷解していきます。

まず前提を見ていきます。
商標権という言葉が使用されているように本事例のテーマは『 ブランド 』でした。

「第一の創業期」A社の前身X社は、100品目以上を取り扱って、10億円を売り上げたが、過剰投資によって事業の継続を断念した。

一方、「第二の創業期」商標権を取得して、3種類の主力商品に限定してスタートしたA社は、(戦友達が手にした)知名度(ブランド)を武器に、地元で売り上げを約8億円まで伸ばした。

そして現在、「第三の創業期」に直面するA社は、全国市場に進出して売上高30億円を目指す。

このとき、今ある3種類のラインアップのまま、地元市場での売り上げと、それに対応する日産50,000個の生産体制で、売上高30億円というビジョンの達成を進めていくことは難しい。

ゆえにA社は「新商品開発」、「販路拡大」、「生産力増強」の3つの施策をビジョン達成のために、今後していく必要があります。

その時、「障害となるリスク」は?
というのが第四問の問いです。

さて、冒頭でもお伝えしました通り、
A社のコアコンピタンスは「 ブランド力 」です。

ですので、A社にとって「ブランドの毀損」が一番のリスクです。

今、A社の主力商品はブランド力を発揮していますが、「新商品開発」という施策により、
事業の継続困難に陥った「第一の創業期」のように「100品目」に増やしたらどうなるでしょう?

障害となるリスク(その1)
「ブランド価値の希釈化」
です。

つまり、全国市場進出のために、独自の新商品を開発するのは与件の通り不可避ですが、そのことが「第一の創業期」のようにブランド価値を希釈化してしまう、というリスクがA社の前途をさえぎる障害となるのではないでしょうか。

 
さて、上記のように、「新商品開発」をブランドと結びつけた後、残るは「販路拡大」と「生産力増強」の2つの施策です。

ところで「第一の創業期」A社の前身X社は、この2つの施策をとりました。そしてどうなりましたでしょうか?

障害となるリスク(その2)
「過剰投資による事業継続の困難」
です。

販路拡大のためには、広告宣伝費、営業人員の増強、生産設備への投資等、相応の先行投資が必要になりますが、ブランド認知度が全国では低いA社の場合、思ったように投資が回収進まず(つまりは過剰投資により)事業継続が困難になるというリスクがA社の前途をさえぎる障害となります。

上記2つの、障害となるリスクを解答骨子にして、第4問の解答例を作成しました。

第4問 解答例(100字)

リスクとして、①主力商品への依存から脱却し新商品の品目を増やすことによるブランド価値の希釈化、②ブランド認知度の全国での低さから販路拡大、生産力増強の投資回収ができず事業が継続困難に陥る可能性がある。
 
  
さて、ここまで見ると、第1問で問われている
「A社が主力製品を再び人気商品にさせた最大の要因」は?
という問いに対する解答の方向性が見えてきます。

最大の要因
「X社の商標権を取得した上で認知度の高い主力商品に集中しブランド価値を高めたことである。」
となります。

取得した商標権をもとに、主力商品にアイテムを集中したことにより、ブランド価値の濃縮化(濃縮は希釈の反意語です)が図れたと考えます。

そして、結論を述べた後は、与件から、上記の「最大の要因」を支持する記述を引用しながら述べていきます。

第1問 解答例(100字)

最大の要因は、X社の商標権を取得した上で認知度の高い主力商品に集中しブランド価値を高めたことである。その実現に、①商品名を冠した新会社名、②HACCP準拠と品質食感の確保、③X社時代の顧客の再購買が貢献した。
 
 
上記の解答のストーリー、次の書籍からもヒントがもらえます。

ブランドのづくり教科書

「ブランドづくりには捨てる勇気が大切だ」131P より
「ブランドをむやみに広げると希釈化してしまう」262P より

上記解答のストーリーと解答例が1つの例として納得できるところがあるようでしたら、この書籍、手にとって、主旨を確かめてみてはいかがでしょうか。

よろしければ発表待ちのこの時期、教科書を読むつもりで、徹底して理解して、我が事のように飲み込んでしまいましょう。

事例の理解、答案作成の糧としてお役に立つかもしれません。

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「ブランドづくりの教科書」(日本経済新聞出版社)
 

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